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キャラクタービジネスの注意点

キャラクタービジネスの注意点

 

 

[目次]

キャラクターデザインの問題点

キャラクターを使ったビジネスを展開する際には商標登録すべきとアドバイスしました(以下の記事を参照)。

 自分で作成したキャラクターデザインを自分で使うのであれば問題はないでしょう。しかし実際のビジネスの場面では、デザインを他者に依頼することの方が多いのではないしょうか。このような場合、キャラクターデザインの権利関係を明確にしておく必要があります。そうでなければ商標登録を取得していても紛争となるケースがあります。

 

ひこにゃん事件にみるキャラクタービジネス

 彦根市は彦根城築城400年祭を開催するに際してイメージキャラクターを募集しました。募集要項には採用されたキャラクターに関する所有(著作権)等の一切の権利は400年祭実行委員会(後に彦根市に譲渡される)に帰属する、と記載されていました。採用されたのは兜を被った愛らしい白い猫を模したキャラクター。そう、みなさんご存知のひこにゃんです。無事に著作権を譲渡された彦根市は採用されたキャラクターを商標登録します(商標登録第5104692号)。

 しかし、ひこにゃんの作者は彦根市と実行委員会に対してイラストの使用中止を求めて民事調停を行うこととなります。著作権の権利処理を行い、商標登録を済ませたにも関わらずなぜこのような紛争になったのでしょうか。

 

著作権とは?

 著作権とはさまざまな権利(支分権)を束ねたものです。支分権の中には、著作物を自由にコピーする権利、著作物の内容を変更する権利、著作物をネットにアップロードする権利等があり、それぞれ複製権、翻案権、公衆送信権といったように別々の権利として存在しています。例えば「自由にコピーしてもいいけど、ネットにアップロードする権利までは与えないよ」という権利処理も可能となります。

 また、支分権の中でも著作物の内容を変更する権利(以下、翻案権といいます。)は特別で、契約書の中で内容の変更を許可する旨の文言を明記してなければ、翻案権は譲渡者(多くはイラスト作成した者)に残るという規定があります(著作権法61条2項)。

 

著作人格権とは?

 他方、著作権(支分権)とは別に著作者人格権という権利があります。勝手に内容を改変されない権利(同一性保持権)、勝手に著作物を公表されない権利(公表権)、作者名を明記する権利(氏名表示権)の3つの権利があります。これらの権利は譲渡することができません。つまり、著作権を譲渡したとしても著作者人格権はイラスト作成者(著作者)に残ることとなります。

ひこにゃん事件の問題点

 ひこにゃん事件に戻りましょう。この事件では「所有(著作権)等の一切の権利は400年祭実行委員会に帰属する」と規約にあったものの、翻案権、内容を改変する行為については何ら規約がありませんでした。イラスト作成者は、譲渡した著作権は次の三種のイラスト関する著作権であって、他のポーズのイラストを作成する行為や着ぐるみ・ぬいぐるみを作成する行為までは許可してない(つまり翻案権は譲渡していない)として紛争に発展しました。

  1. 飛び跳ねているひこにゃん
  2. 座っているひこにゃん
  3. 剣を振りかざしているひこにゃん

 

飛び跳ねているひこにゃん座っているひこにゃん剣を振りかざしているひこにゃん

 

  また、元のイラストにはしっぽがないにも関わらず、彦根市が作ったぬいぐるみにはしっぽがあり、これが著作物の内容を勝手に改変したものであるとして同一性保持権に反するとして調停を申し立てたのでした。

 

契約上の注意

 ひこにゃん事件においては著作権の権利処理が明確でないばかりに紛争に発展しました。この事件を踏まえて、キャラクターデザインを他者に依頼した際、そのデザインの著作権の譲渡契約においては以下の点に注意するしてください。

 

1.翻案権の処理 (二次的著作物にも言及)


 支分権の一つである翻案権が譲渡される旨を明記しておかなければ、ひこにゃん事件のように紛争に発展する可能性があります。この際、合わせて内容を変更した著作物(異なるポーズのイラスト、ぬいぐるみ等。法律上「二次的著作物」といいます。)の権利処理も明確にしておくようにしましょう。具体的には、翻案権及び二次的著作物に関する権利が譲受者に帰属するよう明記します。

 

2.著作者人格権の不行使

 著作者人格権は譲渡することができません。その代わり、契約書上で著作者人格権を行使しない旨を明記することで著作者人格権の行使を回避することができます。

 しかしこのような契約は、キャラクターデザインの作成者の立場からすれば、キャラクターデザインがどんなに酷い改変をされたとしても一切文句がいえなくなってしまう場合もあり、承諾し難いものです。

 キャラクターデザインの作成者とその使用者とのそれぞれの立場を尊重するのであれば、例えば、基本的には著作人格権は不行使としつつも、キャラクターデザインの修正・加工といった改変の際にはキャラクターデザイン作成者(著作者)の許諾がいるというように、改変の内容を知れるようにしておき、著作物をある程度管理できるようにすることが良いでしょう。いずれにせよキャラクターデザインの作成者と使用者とが異なる場合は、それぞれが不利にならないよう、またビジネスが円滑に進むよう両者のコミュケーション・歩み寄りが大切です。

 ちなみにひこにゃん事件では、最終的に、異なるポーズのひこにゃんは作者が作成するという方針で落ち着きました。

商標権の範囲について

 なお、商標権は同一のみではなく似ている範囲(類似の範囲)にまで効力が及びます。キャラクターは色々なポーズを取ることが想定されますが、その全てのポーズを商標登録する必要はありません。スタンダードなポーズの一つを商標登録しておけば、その他のポーズは類似の範囲に含まれますから保護が可能です。

 キャラクターデザインについては、著作権の権利処理をキチンと行った上で商標登録を行い、円滑にビジネスに使用できるように注意しましょう。弊所では著作権のご相談も受け付けております。気になる点があればご相談ください。

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