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【2023年法改正】コンセント制度導入でどう変わる? 商標登録とアサインバックの活用ポイントを徹底解説
2023年4月の法改正により、商標登録の世界で注目されているのが「コンセント(同意)制度」の導入です。本記事では、コンセント制度が実際にどのような場面で活用されるのか、混同を生ずるおそれやアサインバックとの比較を含めて詳しく解説します。これから商標登録を考えている方や、知財戦略を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
コンセント制度導入の概要
今回の商標法改正では、他人が既に登録している商標と同一・類似の場合であっても、当該登録商標の権利者(商標権者)から同意を得ることで例外的に商標登録を認める「コンセント制度」が導入されました(2023年4月1日以降の出願に適用)。
従来、他人の登録商標と同じ・類似の商標が、同一・類似の商品・サービスに対して出願された場合、商標法第4条第1項第11号によって拒絶されるのが原則でした。しかし、商標法第4条第4項により、新たに「商標権者の同意」を得ることで、一定の要件を満たせば登録が可能となります。
「混同を生ずるおそれがない」ことがポイント
ただし、同意さえあれば必ず商標登録ができるというわけではありません。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
- 先に登録された商標と混同を生じるおそれがない
- 商標の周知度や取引実情を考慮しても、将来的に混同が生じる可能性が低い
要するに、消費者が「同じ企業の製品・サービスなのかな?」と誤解するほど紛らわしい商標は、いくら当事者同士で合意していても登録できません。
たとえば、商標も商品もほぼ同一に近い場合は混同が生じるおそれが高いため、証拠があっても登録は難しいでしょう。また、現在のみならず将来の混同可能性も考慮されるため、その点を裏付ける証拠がどの程度求められるのかは、制度導入直後の現時点では不透明です。
コンセント制度とアサインバックの比較
実は、コンセント制度導入以前にも、アサインバックという手法を用いることで、先に登録された類似商標があっても登録を行うことが可能でした。
アサインバックとは、出願人を先の登録の商標権者に一旦名義変更して登録査定後、再度名義を出願人に戻すという手続きを指します。二度の名義変更が必要になるため手間がかかるものの、これまでも一定の場面では実際に活用されてきた手法です。
なぜ今でもアサインバックは有用か?
コンセント制度の導入により、「同意書を提出すれば手続きが簡単になるのでは?」と考えられることもあります。しかし、混同を生じるおそれがないことを証明するため、追加の契約書や証拠を準備しなければならない可能性があります。
そのため、コンセント制度の証明書類を揃えるコストが高くなるのであれば、「いっそアサインバックで登録した方が早い」と判断されるケースも出てくるでしょう。
また、コンセント制度では「同意書の形式は自由(メールでも可)」と言われていますが、実務上は将来的な混同防止を示す契約書などが必要になる場合もあります。結局は手続き的な負担が増える可能性もあるため、アサインバックの方が結果的に手間が少ないケースも考えられます。
今後の商標登録戦略とまとめ
コンセント制度は選択肢を増やし、柔軟な商標登録戦略を取れる点で有意義です。しかしながら、「同意があればどんな類似商標でもOK」とはならないことに注意が必要です。
将来的に消費者の混乱を招かないことを証明するための手続きや証拠提出が求められる可能性があるため、先登録商標の権利者との関係や手続きコストを総合的に考慮した上で、コンセント制度とアサインバックのどちらを利用するかを決めるのが得策でしょう。
いずれにしても手段が増えることは喜ばしいことであり、ケースバイケースで最適解を探ることが重要です。当事務所としても、適切な商標権取得をサポートするべく、引き続き最新の運用状況を確認しながら対応してまいります。
参考条文・関連資料
- 商標法第4条第4項:「…(同意がある場合でも)混同を生ずるおそれがないものについては、第4条第1項第11号の規定を適用しない」
- コンセント制度に関する審査基準
- 審査便覧(1)
- 審査便覧(2)
- 改正法解説
- コンセント制度導入に伴う混同防止請求・取消審判の改正(商標法第24条の4の2、第52条の2第1項)