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知的財産の調査報告書・鑑定書・見解書の違いとは?適切な知財リスク対策を解説
前回の記事で、事業を開始する前に知的財産調査を行い、権利侵害のリスクを減らすことの重要性を解説しました。
調査を実施した場合、その結果をまとめた調査報告書を作成します。しかし、知財の世界では、鑑定書や見解書といった書類も存在します。これらの書類は、それぞれ用途や目的が異なり、適切に使い分けることが重要です。
本記事では、それぞれの違いを詳しく解説し、どの場面で活用すべきかをご紹介します。
1. 調査報告書とは?
調査報告書は、特許・意匠・商標などの権利関係を調査し、その結果をまとめたものです。主に、自社の商品やサービスが他社の知的財産権を侵害していないかを確認するために使用されます。
✅ 主な用途
- 事前の知的財産権リスクの回避(FTO調査・クリアランス調査)
- 取引先への説明資料(製造委託時など)
- 新規事業のリスク評価
調査報告書は、事業を開始する前のリスク管理に有効ですが、裁判や権利行使に直接用いるものではありません。
2. 鑑定書とは?(裁判に耐えうる正式な文書)
鑑定書とは、特許侵害や意匠・商標の権利範囲を専門家が判断し、裁判や審判の証拠として使用できる文書です。
一般的な知財調査と比較すると、以下のような広範囲な検討が行われます。
🔍 鑑定書で検討するポイント
- 侵害の成否(他社の特許や商標を侵害しているか)
- 権利の有効性(そもそもその特許が有効か)
- 先使用権などの抗弁の有無(侵害を免れる法的根拠の有無)
「裁判で必要なら、その時に鑑定を依頼すればいいのでは?」 と思われるかもしれませんが、それでは遅すぎる場合があります。
⚠ 鑑定書が必要な理由
例えば、X社が競合に対し「特許を侵害している」として警告書を送付したとします。しかし、実際には特許侵害が成立しないケースだった場合、X社は相手の事業を妨害したとして損害賠償請求を受けるリスクがあります。
こうしたトラブルを防ぐため、警告書を送る前に鑑定を行い、侵害の成否や権利の有効性を確認することが重要です。
⚠ 特に注意が必要な権利:実用新案権
実用新案権は、特許と異なり「実用新案技術評価書」を取得しないと権利行使ができません。事前の鑑定が必須となるため、より慎重な対応が求められます。
3. 見解書とは?(社内・取引先向けの簡易版鑑定書)
見解書は、内容としては鑑定書と同レベルの専門性を持ちますが、主に社内や取引先での判断材料として使われる文書です。裁判での証拠として使用されることは少なく、簡易的な鑑定書と考えると分かりやすいでしょう。
✅ 見解書の主な用途
- 社内稟議(意思決定の資料)
- 他社への製造依頼時の事前チェック
- 調査報告書では不十分な場合の補強資料
- セカンドオピニオンの取得(他事務所の調査結果の検証)
特に、事業規模が大きく慎重な判断が求められる場合には、見解書を活用することで、より客観的な意見を得ることができます。
4. 判定とは?(特許庁による客観的判断)
特許庁には、「判定」という制度があり、特許・意匠・商標の権利範囲について、公的な判断を受けることが可能です。
📌 判定で得られるもの
- 特許発明の技術的範囲(侵害の有無)
- 登録意匠の類似範囲(デザインの権利範囲)
- 商標権の効力の範囲(使用可能な範囲)
判定は公的機関の判断であるため、裁判や交渉の場で強い証拠となります。しかし、判定にはデメリットもあります。
⚠ 判定の注意点
- 判定結果は公開されるため、不利な判定が出た場合に影響が大きい
- 法的拘束力はなく、裁判で覆る可能性がある
そのため、鑑定書・見解書と併せて慎重に判断することが重要です。
ここまで4種類の知的財産関連書類について解説してきました。以下の図解で、それぞれの特徴と使い分けを一目で確認できます。
図1: 知的財産関連書類の特性比較と活用場面
このように、各書類には明確な用途の違いがあります。次に、適切な専門家の選び方について解説します。
5. 鑑定書・見解書作成のポイント(適切な専門家の選び方)
🔍 鑑定書や見解書を依頼する際のポイント
- 弁理士の専門分野を確認する(特許・意匠・商標など)
- 権利行使案件の経験が豊富な弁理士を選ぶ
- 他の専門家とネットワークを持つ弁理士が望ましい
知財の世界では、分野ごとに専門性が異なります。例えば、特許であれば電気・化学・機械など、商標であればブランド戦略に詳しい専門家が適しています。適切な弁理士を選ぶことが成功の鍵となります。
まとめ|どの書類を選ぶべき?
書類名 | 用途 | 主な活用場面 |
---|---|---|
調査報告書 | 事業前のリスク管理 | 侵害リスクを事前に確認 |
鑑定書 | 裁判や警告書送付の前提資料 | 侵害の成否を精査 |
見解書 | 社内・取引先向け判断資料 | 重要案件の補強 |
判定(特許庁) | 公的な侵害判断 | 公式な判断を求める場合 |
適切な書類を選択し、知財リスクを最小限に抑えることが、事業の成功につながります。
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