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大阪などの地名を含む商標の保護

作成者: 弁理士 杉浦健文|2022/12/15

[目次]

  1. 大阪・東京など地名を含む商標の問題点
  2. 商標を有名にして登録する方法
  3. 商標をロゴ化して登録する方法
  4. 地名と造語等を含む商標の問題点
  5. 地域ブランドの保護
  6. 地理的表示(GI)保護制度
  7. まとめ
  8. この記事へのお問い合わせ

大阪・東京など地名を含む商標の登録性

 ブランド展開にあたって「地名」を含んだ商標を使う場面があるかと思います。このような商標を権利化する場合にはどのような問題が生じるでしょうか。

 商標は、その商品・サービスの目印となるべきものですから、「地名」そのものは商標登録ができません。

 【例】

  • 大阪、オオサカ、OSAKA
  • 東京、トーキョー、TOKYO

 同様に、「地名」と「商品・サービスの一般的な名称」(これを「普通名称」といいます。)からなる商標も原則登録することはできません。

 【例】

  • 大阪ラーメン、オオサカラーメン、OSAKAラーメン
  • 東京クリーニング、トーキョークリーニング、TOKYOクリーニング

 これらは単に目印にならない、極めて目印になりにくい商標であるとともに、このように誰しもが説明的に使いたいであろう「地名」、「地名」+「普通名称」からなる商標を個人に独占させるのは公平であるという考えがあり、法律上登録が認められていません。

商標を有名にして登録する方法

 しかし、このような商標であってもある程度使い続けることで例外的に権利化できる場合があります。そもそもは目印となりにくい識別力の低い商標であっても使用期間が長いなど、その商標が出所表示としてその商品やサービスの消費者(需要者)の間で認識されるに至った場合は登録されます。

 このように「地名」+「普通名称」からなる商標を権利化したいのであれば、ある程度使い続けて有名になってから出願する必要があります。当然権利化するまでの間は第三者がその商標を使うことを止めることができません。

商標をロゴ化して登録する方法

 また、有名の程度も全国レベルの周知性を必要としますから、「地名」+「普通名称」からなる商標は非常にハードルが高い商標となります。なお、相当程度ロゴ化すれば登録しやすくなりますが、これはあくまでブランドとしてロゴが大事な場合に限ります。登録のためだけにロゴを作成するのは本末転倒ですので留意してください。

地名と造語等を含む商標の問題点

 他方で、「地名」+「造語」(あるいはこれに類する語)からなる商標であれば問題なく権利化することが可能です。ただしこの場合は「商品の品質あるいはサービスの質の誤認」が生じないように指定商品を工夫する必要が生じる場合があります。

 例えば商標に「大阪」というワードが含まれる場合、消費者は普通その商品(あるいはサービス)が大阪で生産されたもの、大阪で提供されるものと認識するでしょう。仮に「大阪」というワードが含まれているにも関わらず、その商品が東京で生産されているものであれば、消費者は大阪由来のものであるから商品の購入を決定したにも関わらず、東京産だなんて!わかっていれば購入しなかったと思うでしょう。

 商標法ではこのような事態を防ぐため、つまり消費者を守るために商品などの品質を誤認させるような商標を取得できないとしています(商標法4条1項16号)。これを避けるためには、指定商品の記載を「大阪産の〜」というようにする必要があります。

 なお、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat[JPP])で「大阪」を含む商標を調べると枚挙に暇がないほど検出されます。その中には指定商品を「大阪産の〜」というように限定されていない商標もあります。これは「大阪」というワードが付記されてはいるものの、商標全体として一つの造語として認識されるであろうという商標、つまり消費者が「大阪産」のものであるとは誤認しないであろうと判断された商標は登録されます(例:商標登録第4436555号「大阪王」など)。

商標登録第4436555号

商標:大阪王

指定商品・役務:第30類 ぎょうざ

商標権者:株式会社ハンエイ

地域ブランドの保護


 地名を含む商標は性質的に地域ブランドに関わるものが多いかと思います。商標法には地域ブランドの保護を目的とした制度があり、これを「地域団体商標」といいます。上記の通り、「地名」+「普通名称」から商標は原則登録できません。地域団体商標として出願することで、全国的な周知性を獲得していなくとも登録を受けることができます。

 この地域団体商標は、特産品等を主とする地域ブランドを保護することを目的としている性質上個人の出願は認めていません。特定の団体のみが出願することができます。例えば、商標「泉州水なす」は大阪泉州農業協同組合(及びいずみの農業協同組合)が権利者です。

 地域団体商標においても、需要者の間である程度有名になっていなければなりませんが、全国レベルの周知性は求められていません。商品や役務の種類や流通の経路を勘案して相当程度に知られていれば登録を受けることができます(目安として複数の都道府県で周知されていることが求められます)。なお、地域団体商標の指定商品は産地を限定する必要があります(泉州水なすの指定商品は「大阪府泉州地域産の水なす」)。

 個人ではなく、地域をあげて特産品のブランド化を目指すのであれば、地域団体商標を活用してください。

商標登録第5063730号

 商標:泉州水なす

 指定商品・役務:大阪府泉州地域産の水なす

 商標権者:大阪泉州農業協同組合(大阪府泉佐野市)

      いずみの農業協同組合(大阪府岸和田市) 

 ちなみに、筆者である私も、過去に地域団体商標の代理人弁理士として、地域団体商標の出願を担当させていただきました。そのときは、「東京」+「二八そば」を組み合わせた「東京二八そば」や「東京二八蕎麦」という商標でした。これも無事に登録になり、現在も保護されております。

地理的表示(GI)保護制度


 地域の知的財産を保護する制度として、地域団体商標とは別に、「地理的表示(GI)保護制度」と呼ばれるものがあります。地域団体商標と似たような制度かと思われますが、こちらは農林水産省が管轄しており、その保護対象も農林水産物や飲食料品のみです。概ね25年程度の使用(生産)実績が必要であるためハードルは高いです。

 この制度の最大の特徴は、一旦GIとして登録されると行政が不正使用を取り締まりしてくれますので、権利者に訴訟負担がかかることなく産品ブランドを保護することが可能となります。また、日本でGIとして登録すれば、国家間の国際約束によって海外においても地理的表示の保護の実現が可能となります(商標権は国毎に権利を取得する必要があります)。

まとめ

 このように地名を含む商標の権利化については少々事情が複雑です。「地名」を含む商標を権利化したい、地域団体商標、地理的表示保護制度(GI)を登録したいということであればご相談下さい。

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