【目次】
製造・販売前に知財の調査が必要な理由
特許調査(実用新案権調査)、意匠調査、商標調査と色々な調査がありますが、これらはどのような場面で何のために行われるでしょうか。ここでの調査とは一般に侵害調査(FTO調査、クリアランス調査)を指します(権利が取得できるかどうかの調査は商標に限ってはある程度判断可能ですが、特許や意匠はほぼ不可能です)。特許権、意匠権、商標権は権利者やそのライセンスがある者以外の特許等の使用を一切禁止することができる権利であり、権利者や内容を公開して誰もが知ることができるようにしています。ですからついうっかり使ってしまうと即権利侵害となってしまいます。そう、知らなかったでは済まされないのです※1。侵害となると販売はもちろん停止され、損害賠償を請求される場合もあります。そこでこのような事態を避けるため、事前に侵害調査をしてリスクを減らします。
ここで、権利を侵害するかどうかの主体は各行為者ごとに判断されます。※2
例えば、とある製造メーカーが100円均一ショップ専用品として商品を卸しています。100円均一ショップはこれを販売します。もしこの商品が特許権侵害であった場合どうなると思いますか?
製造メーカーが特許権侵害になることはすぐにお分かりになるでしょう。では100円均一ショップの販売行為はどうでしょうか?
この場合、100円均一ショップの販売行為も特許権侵害となります。製造者の製造行為と販売者の販売行為はそれぞれ別個の行為ごとに権利侵害が問われるとはこういうことです。
いずれも侵害者になる可能性がありますので、製造メーカーまたは100円均一ショップは、事前に知財に関する調査を行い、自らが製造あるいは販売する商品が権利を侵害していないことを確認しておく必要があります。
また、最近ではAmazonや楽天といったウェブ上のプラットホームが整備されて容易に商品の小売が行えるようになっています。Amazonで等のようなECサイトでは、第三者から知的財産権を侵害するおそれがあるという趣旨の通報が場合には出品がすぐに停止されるようになっています。通報の内容が正しいか誤りかに関係なく直ちに出品者のアカウントを停止する措置を取るようです※3。このような措置を取るのは、販売を続けると自らも侵害者となってしまう可能性があるからでしょう。
そもそも出品する商品が自社のものではなく、他社の商品を納品して販売するような場合には、製造依頼時などに「第三者の知的財産権を侵害していないことを確認したかどうか」が契約上、問われることもあります。※4
メーカーや卸業者、小売業者との間でのトラブルを防止する意味合いでも知財財産権の調査をおこうようにしてください。上記ような場合でなくても、事業を始める前には積極的に知的財産権の調査を行うほうが良いです。
調査を行うことでも良いですし、商標であれば出願してみるのも一策でしょう。出願することで特許庁が出願内容を審査してくれるわけですから、ある意味で特許庁に審査してもらっていることになります。権利化すれば比較的低いリスクで事業を運用することができます。
調査だけ行えば良いのか、それとも出願を行った方が良いのか、契約書の文言の確認など、クライアント様の状況に応じて対応いたしますので何なりとお問合せください。
参考:
※1独占排他権といいます
※2実施行為独立の原則といいます
※3
https://sellercentral.amazon.co.jp/help/hub/reference/external/201361070?ref_=sdjp_sell_xscjp_201361070_i&initialSessionID=358-7044414-3358454&ld=SEJPSOAGoog_soa_branded_traffic_cmp-21087318360_adg-159462772203_ad-693339275179_kwd-362864046473_dev-c_ext-_prd-_sig-Cj0KCQjwjLGyBhCYARIsAPqTz19sAIlgZZfJve3IT1YJThalJ2R8IJQNJAs_AV9xkEAA9-t2nPI9C3MaApJnEALw_wcB_asret&ldStackingCodes=SEJPSOAGoog_soa_branded_traffic_cmp-21087318360_adg-159462772203_ad-693339275179_kwd-362864046473_dev-c_ext-_prd-_sig-Cj0KCQjwjLGyBhCYARIsAPqTz19sAIlgZZfJve3IT1YJThalJ2R8IJQNJAs_AV9xkEAA9-t2nPI9C3MaApJnEALw_wcB_asret
※4
なお、契約書においては一点注意が必要です。上記のように、侵害していないことを確認してリスクが低いことを証明するまではよくある条項ですが、ここから一歩進んで「第三者の知的財産権を侵害していない『保証』する」という条項を結ばせようとする場合があります。このような契約書は安易に了承してはいけません。特に、特許権、実用新案権、意匠権、商標権については了承してはいけません。というのも、侵害調査を行うのは専門家である弁理士であることが多いですが、弁理士は侵害の有無について意見を述べることはできます。しかし、侵害していないことを『保証』することまではできません。侵害かどうかは最終的には裁判で決着がつくものですから、保証までどうころんでもできないのです。ですから『保証』などと書かれた契約書は必要以上の責務を背負ってしまうことになるため絶対にのまないようにしてください。