ハーグ国際意匠出願
ハーグ国際意匠出願の概要
ハーグ国際意匠出願とは?
ハーグ国際出願とは、WIPO国際事務局又は日本国特許庁への一つの出願手続で、指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国際出願・登録システムです。日本国特許庁にハーグ出願をすることができますが、現在、8割程度はWIPO国際事務局にインターネットを通じて出願できる、E-filingを利用して出願します。出願の際は、現地代理人を選任する必要がないため、その分、費用を安価に抑えることができます。
直接出願とは?
直接出願とは、日本弁理士等を通じて各国の現地代理人に外国意匠出願を行うこと言います。各国ごとに現地代理人を選任し、各国の言語でその国の出願様式で願書を作成します。特に図面の作図ルールは各国ごとに異なりますので、その国に適合した意匠図面を準備します。直接出願のメリットはあらまじ現地代理人に意匠図面を確認、修正してもらえることです。
ジュネーブ協定(ハーグ)の締約国一覧
ハーグ協定の締約国は現在75カ国
ハーグ協定の締約国は現在75カ国になります。従来はハーグ締約国が少なかったことから、外国で意匠権を取得する方法は、希望する国に直接意匠出願する方法しかありませんでした。しかし、日本がハーグ協定に加盟したことで、従来に比べてより安価で容易に外国意匠出願を行うことができるようになりました。
「台湾」は現時点ではハーグ締約国ではありませんのでハーグ国際意匠出願をすることができません。直接、台湾に外国意匠出願をする必要があります。
アルバニア | スペイン | リトアニア | シンガポール |
アルメニア | フィンランド | ラトビア | スロベニア |
アゼルバイジャン | フランス | モロッコ | サンマリノ |
ボスニア・ヘルツェゴビナ | ガボン | モナコ | セネガル |
ブルガリア | 英国 | モルドバ | スリナム |
ベナン | ジョージア | モンテネグロ | サントメ・プリンシペ |
ブルネイ | ガーナ | 北マケドニア | シリア |
ボツワナ | ギリシャ | マリ | タジキスタン |
ベネルクス知的財産庁 (BOIP) |
クロアチア | モンゴル | トルクメニスタン |
ベラルーシ | ハンガリー | メキシコ | チュニジア |
ベリーズ | イスラエル | ナミビア | トルコ |
カナダ | アイスランド | ニジェール | ウクライナ |
スイス | イタリア | ノルウェー | 米国 |
コートジボワール | ジャマイカ | アフリカ知的所有権機関 (OAPI) |
ベトナム |
中国 | 日本 | オマーン | サモア |
ドイツ | キルギス | ポーランド | |
デンマーク | カンボジア | ルーマニア | |
エストニア | 北朝鮮(注) | セルビア | |
エジプト | 韓国 | ロシア | |
欧州連合知的財産庁 (EUIPO) |
リヒテンシュタイン | ルワンダ |
(2022年6月現在)
「日本」もハーグ国際意匠出願が可能
ハーグ国際意匠出願において日本国を指定することも可能です。この場合、パリ条約に基づく優先権の主張を行った場合、新規性喪失の例外適用の主張を行った場合には、以下の期間内に日本国特許庁に対して、これらの「証明書」を提出する必要があります。
- 優先権・・・・・・・・・出願時又は国際公表から3月以内
- 新規性喪失の例外・・・・出願時又は国際公表から30日以内
ハーグ国際意匠出願のメリット
出願手続の簡素化
複数意匠一括出願
英語で願書を作成することができ、しかも、出願書類を1通作成するだけで、ハーグ締約国に意匠出願することができます。また、関連する意匠であれば最大100個の意匠まで含められます。
間接経費の削減
現地代理人の選任費用や翻訳費用が不要
現地代理人を選任せずに、その国にハーグ国際意匠出願をすることができます。特許のように国内移行手続がないため、翻訳費用が発生しません。なお、拒絶の通報に応答する場合等、各指定締約国官庁に直接手続をする際に、別途、現地代理人を選任する必要があります。
権利管理の簡便化
国際登録の権利はWIPO国際事務局で一元管理される
5 年ごとの権利更新や国際登録の変更(所有権の変更、放棄、名称変更等)に係る各種申請は全て WIPO 国際事務局に対する1つの手続ですみ、各国に直接手続をする必要がありません。
直接出願とハーグ国際意匠出願の対比
現地代理人
ハーグ国際意匠出願では現地代理人を選任しないで外国意匠出願をすることができます。オフィスアクション(拒絶の通報)が通知されたときは、現地代理人を選任しないと行けません。
願書書式と図面ルール
願書は現地の言語で、現地の様式に適用するように作成します。図面は各国の図面ルールに従って作成します。国によっては日本とは異なる図面ルールがあるため、その国の図面ルールに適合した図面を準備する必要があります。
更新
権利の更新等についてはWIPO国際事務局に一括でて手続可能。各国ごとに現地代理人に依頼する必要なし。
直接出願 | ハーグ国際意匠出願 | |
言語 | 各国の言語 | 英語、フランス語、スペイン語 |
書式 | 各国の書式 | 統一 |
図面ルール | 各国のルール |
各国のルール ※一部緩和あり |
現地代理人 | 必要 |
原則不要 ※OA対応時は必要 |
更新 | 各国 | WIPOに一括手続 |
所有権移転、取り下げ等 | 各国 | WIPOに一括手続 |
※OA対応時:拒絶理由が通知されたときは、現地代理人を選任しなければならい場合があります。
意匠の新規性喪失の例外規定一覧
各国の新規性喪失の例外期間
日本は新規性を喪失してから1年以内に出願すれば良いことになりましたが、国によっては6ヶ月以内に意匠出願をしないといけな国があります。
証明書提出の有無
アメリカのように証明書が不要な国もあれば、日本のように証明書を要求するなどあります。
行為の限定
日本は、販売、SNS、展示会出品など、意匠登録を受ける者に起因する行為であれば、新規性喪失の例外を受けられますが、国によっては、その国の政府が認定した展示会に出品する限り、新規性喪失の例外が認めらるなど、厳しい規定を採用しているところがあります。
意匠 | 新規性喪失の例外期間 | 証明書 | 行為の限定 |
日本 | 1年 | 要 | なし |
アメリカ | 1年 | 不要 | なし |
中国 | 6ヶ月 | 要 | 限定 |
欧州 | 6ヶ月 | 要 | 限定 |
韓国 | 1年 | 要 | なし |
台湾 | 6ヶ月 | 要 | なし |
インド | 6ヶ月 | 不要 | 限定 |
ロシア | 1年 | 不要 | なし |
実体審査の有無一覧
実体審査がない国
日本意匠では、審査されるのが当たり前ですが、国によっては方式だけ審査し、実体審査は行わずに登録する制度を採用する国があります。以下では、実体審査をする国としない国とをまとめておきます。
実体審査 | |
日本 | あり |
アメリカ | あり |
中国 | なし |
欧州 | なし |
韓国 |
あり 一部無審査 |
台湾 | あり |
インド | あり |
ロシア | あり |
英国 | なし |
ベトナム | なし |
メキシコ | あり |
タイ | あり |